ゴルフ合コンのカギはこれだ
私は、Mの境遇では、それをすることがどんなに大変なことかわかっていましたが、彼女と話し合って、「顔からできるだけほほ笑みを絶やさないように」とアドバイスしました。
そうしたところ、数週間もたたないうちに、彼女の毎日の仕事の様子が驚くほど変わってきたのです。
最初は、彼女も自分のわざとらしさが気になりましたが、すぐに自分が何となく明るくなっていくのがわかりました。
しかし、一番大きな変化は、周りのスタッフや患者さんが明らかに彼女に好意を寄せるようになったことです。
彼らはMにほほ笑み返すようになり、こうしたみんなの温かな態度に接することにより、Mは自分が重要な仕事をしていると感じられるようになりました。
そしてさらに自分の仕事が面白くなり、それまではただ疲れ果てるだけだったのが、逆に仕事から生活のパワーまでもらえるような気がしてきました。
Mは救急医療センターでは「ほほ笑み屋さん」というあだ名までもらうようになりましたが、それを彼女も楽しんでおり、彼女の言うところでは、救急医療センター全体も以前と比べるとずっと明るくなり、みんなが気軽に冗談を言い交わせるような雰囲気になったということです。
最後にMと会ったとき、彼女は次のように言っていました。
「最初は確かに努力してほほ笑んでいましたが、それが十分に価値のあることだとわかるようになると、自然にほほ笑むようになりました。
今では、仕事に対する気持ちもずいぶん変わり、毎日の時間が充実しているように感じられます。
将来のことに対しても、以前よりも積極的に考えられるようになり、はっきりと目標が見えてきたような気がします」数週間にわたってMが変化していく様子を見ることができたのは、私にとっても大きな喜びでした。
彼女は正しい選択をしました。
その結果、確かにいまだに長時間労働で疲れ果て、また相変わらず少ない報酬で生活は大変かもしれませんが、今は人生を避けるのではなく、人生を抱きしめ、真剣に取り組む気持ちになっており、私は安心して彼女を見守ることができるようになりました。
ロンドンの地下鉄は誰にとっても愉快な場所ではありませんが、私もやはりできれば避けたいところです。
ところがそこで、1人の人間の幸福な様子が周りの人も幸せにするという典型的な例を見かけたのです。
車両には、2歳くらいの女の子が母親と一緒に乗っていました。
その女の子の様子は本当にかわいらしくて、車両に乗っていた乗客はみんな思わず見とれてしまい、ほほ笑んだり笑いかけたりしたくなりました。
いかにもシティで働いていますといったピンストライプの背広の紳士も、新聞の経済欄を読むふりをしながら、その子に「いないいないばあ」をし、学生ふうの若者はおかしな顔をして注意を引こうとします。
ストレスで張り詰めているようなキャリアウーマンも思わず表情をゆるめ、小学生くらいの子どもたちは、お互いに言い争っていたのをすっかりやめて、競って女の子に話しかけ始めました。
この光景は、私が今までに目にしたなかで、幸福の力の強さを最も印象づけるものでした。
その日、この車両に乗り合わせた乗客はみんな、その女の子に出会ったことで幸せな気分になったことと思います。
彼女からは幸せのオーラが発散していて、彼女自身もそのことを感じているに違いありません。
私は彼女が今後もずっとそのオーラを出し続けていくことを心から願いました。
自分は運が悪いと思い込んでいたカティのケース。
もう1人のケースを紹介しておきたいと思います。
彼女の名前を仮にKとしておきます。
彼女とは6ヵ月以上にわたってお付き合いすることになりましたが、正直いって、最初に会ったとき、「これはかなり重症だな」と思いました。
明らかにひどい状況にいる様子で、落ち着きがなく、しかも疲れ果てていました。
聡明で魅力的な女性なのですが、彼女は、自分がとても不幸に思え、精神的にすっかり煮詰まった状態になり、私に助言を求めてきたのです。
両親との関係についても、悩んでいました。
仕事の内容は面白いが、給料が少なく、しかも長時間労働を強いられる出版社勤めをしていました。
彼女にとって不満のひとつは、職場では圧倒的に女性の数が多く、男性と知り合う機会が少ないことでした。
さらに、長時間労働のため疲れ果て、仕事以外で外部の人と知り合いになるための体力も気力もないことをこぼしていました。
ストレス過剰で疲れ、涙もろくなり、孤独を感じていました。
過去にはボーイフレンドも何人かいて、それぞれ魅力的ではあったのですが、結局は自己中心的に思え、うまくいかなくなったようでした。
Kは、常々、自分は本当に運が悪いと言っていました。
それに対して私が、幸せというのは、結局、自分の責任で見つけるものだと言っても、どうもピンとこないようでした。
Kの日常を見ていると、確かに、思いどおりにいかないことが多いようで、人生は自分には不公平にできているとますます嘆いていました。
外出しようとすると、電車はいつも遅れるかストップしており、それを待ち合わせの相手に知らせようとすると電話は通じない。
それで車を運転して行こうとすれば、突然横から他の車が飛び込んできて接触事故を起こす。
私との面談のときも、いつも遅れるか、あるいは忘れてしまって姿を見せないこともありました。
彼女が仕事の同僚たちからどんなふうに思われているか、改めて聞くまでもないことでした。
セラピストに対する態度を見れば、ほぼ察しがつくものです。
私は何とか彼女のセラピーがうまくいくようにと頑張りましたが、正直なところ、なかなか大変だったと認めざるを得ません。
Kも私に対して、ときには涙ぐみながら、もし自分の相手をするのがいやならそう言ってほしいと訴えました。
でも、私は、Kもきっと自分を変えることができると信じていましたし、Kにもそう信じてほしかったので、Kとの面談を続けることにしました。
そこで、私はわざと彼女には厳しく当たることにしました。
まず、毎日の計画を立てさせ、それを守るようにと言いました。
そして、生活を秩序正しいものにすることを要求しました。
さらに、すべてのことを今までよりも5分早くするように言いました。
仕事に行くときも今までよりも5分早い電車に乗る、あるいは私に会いにくるときも、今までよりも約分早く着くようにする。
最初のうちは、彼女もそんなことは馬鹿げていると思っていたようですが、だんだん慣れるにしたがい、心地よくなり、気持ちがゆったりしてきたようです。
こうして、彼女自身の力で、自分の生活の中の不幸の原因であったと思われるものを、ひとところで、彼女を見ていて偉いなと思ったのは、自分がどんなに惨めな、あるいは不幸のどん底にいると思えるようなときでも、会社だけは勝手に休んだりしなかったことです。
そんな彼女に対しては、私も心から同情していましたし、また支えになりたいと思っていることを伝えるのも大切なことでした。
しかし、それだけでは十分ではありません。
結局は、自分で責任を持たなければならないと自覚してもらうより他にないのです。
ひとつひとつ取り除くようにしていきました。
夏休みが近づいてきました。
Kは、毎年2週間の休暇をとるようにしていましたが、それまでは両親と一緒にどこかに出かけていました。
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